本記事では,成分解析からシャンプーを選ぶ方法について説明します.
初心者の方にも読めるよう,絵をたくさん使って,簡単で分かりやすく説明しています.
本記事を読むことで,
「シャンプーのことを知り,本当に自分に合ったシャンプーを選べるようになります」
それでは少し長い記事ですが,お付き合いください.
シャンプーの中身ってどうなってるの?:成分構成
成分にこだわってシャンプーを選ぶには,そもそもシャンプーがどんな中身でできているのか,その「成分構成」を知る必要があります.
「成分構成」とかむずかしい言葉がでてきましたが,心配いりません.
次の絵に示す,たった3つの種類からできています.
シャンプーの中身は ①洗浄成分,②質感補正成分,③補修成分 の3つからできています.
本当はこれに加えて,その他成分(香料,保存料,水)が含まれていますが,成分から考える際には上の絵の,3つの中身に注意します.
3つの中身の簡単な説明は,次のようになります.
- 洗浄成分:脂汚れを落とす成分
- 質感補正成分:シャンプー時に髪がきしまないようにする成分
- 補修成分:髪を美しくするための成分
この3つの中身がそれぞれどのような成分からできているかを見ることで,「本当に髪に優しい自分に合ったシャンプー」を選ぶことができます.
なにやらむずかしそうになってきましたが,簡単に説明していきます.
それでは次に,各中身について,もうすこし詳しい説明と,選び方の注意点,そして実際にどんな成分のものを選べば良いのかについて説明します.
シャンプーの洗浄成分の説明,選び方の注意点と実際の成分
洗浄成分ってなにするの?
最初にシャンプーの洗浄成分について説明します.
シャンプーは汚れを落とすために使用しますが,実は汚れには2種類あります.
「ほこりやチリなどの水で落ちる汚れ」と「スタイリング剤や皮脂,排気ガスなどの水で落ちない油汚れ」です.
食器洗いでも,油汚れは水で落ちないので洗剤を使います.
おなじように,シャンプーでも油汚れを落とすために洗浄成分がふくまれています.
この洗浄成分は「界面活性剤」とよばれています.
難しい名前ですが,簡単に言うと「油汚れをつつみこんで,水で落ちるようにする」ものです.
最初,油汚れは以下の絵のように水をはじいて落ちません.
シャンプーを使えば,洗浄成分である界面活性剤が,油汚れにつき刺さります.
この絵のように,界面活性剤というのは,「棒側が油につき刺さる」ようになっています.
そしてもう片方は水色になっていて,「水で流れ落ちる」ようになっています.
水色の丸のなかに「-」と書かれているのは,マイナスという意味です.
マイナス磁石のような性質があります.
このようなマイナスの界面活性剤は「アニオン界面活性剤」とよばれますが,むずかしい名前なので覚えなくても大丈夫です.
このようにして,界面活性剤がつき刺さった油汚れは簡単に水で流れ落ちます.
このように水で落ちない油汚れを,シャンプーの洗浄成分がつつみこんで落ちるようにしてくれます.
以上がシャンプーの洗浄成分の役割です.
洗浄成分を選ぶときの注意点
洗浄成分は油汚れを落としてくれますが,注意点があります.
それは「私たちの髪の毛も油成分でできている」ということです.
体脂肪率という言葉があるように,私たちの身体には脂成分が含まれています.
そして髪の毛にも脂成分が含まれています.
「キューティクル」という言葉を聞いたことがあると思います.
キューティクルは髪の毛の外側にくっついていて,髪の毛の内側を守るウロコのような役割をしています.
美しい髪は,キューティクルがきちんと髪にくっついている状態です.
このキューティクルを髪の毛にくっつけている接着剤があります.
この接着剤は,「CMC(細胞間脂質)」とよばれます.
その名前に”脂質”とあるように,脂成分でできています.
シャンプーの洗浄力が強いと,このCMCの脂成分まで界面活性剤で流れ落ちてしまって,キューティクルがガタガタになってしまいます.
洗浄成分の質が低いと,CMCが流れ出て,キューティクルをきちんと接着できずにガタガタになってしまいます.
このCMCが流れ出ることを,「髪への刺激性がある」と言います
そのため,洗浄成分を選ぶ注意点としては
「きちんと油汚れを落とすことができるが,髪の毛の脂成分までは落とさない」ものを選ぶことが重要です.
洗浄成分の具体的な成分
それでは洗浄成分の説明の最後に,具体的にどのような成分を選べば良いか説明します.
まず絶対に避けるべき成分があります.
それは硫酸系とスルホン酸系です.
硫酸系としては,シャンプーの成分表にラウリル硫酸Na,ラウレス硫酸Naなどと書かれています.
スルホン酸系としては,シャンプーの成分表にオレフィン(C14-16)スルホン酸Naなどと書かれています.
最近はラウレス硫酸が良くないという情報も浸透してきて,スルホン酸系を使うことが多いのですが,スルホン酸系も良くはないです.
これらの硫酸系・スルホン酸系の洗浄成分は,つぶが小さいです.
そのためキューティクルの隙間からCMCに入り込んで,CMCが洗い流されてしまうため,髪への刺激性が高いです
ラウレス硫酸系・スルホン酸系の成分が入っているシャンプーの一覧を別記事で紹介しています.
あなたが普段使用しているシャンプーは大丈夫か確認してみてください.
ラウリル・ラウレス硫酸,スルホン酸が含まれているシャンプーの一覧
成分から本当に優しい良いシャンプーを選ぶには,「ラウレス硫酸○○」と「○○スルホン酸」と書いてあるシャンプーを買わないようにすることをお勧めします.
それでは,どんな成分が良いのかということですが,
アミノ酸系洗浄成分,およびベタイン系洗浄成分がおすすめです
これらの洗浄成分はつぶが大きいため,CMCへ入り込みにくいです.
そのため,髪への刺激性が少ないです.
この二つを比べるとアミノ酸系のほうが,ベタイン系よりも洗浄力が強いですが,刺激性は少し強くなります.
ただ,アミノ酸系でも十分に低刺激です.
サロンで使用しているシャンプーは,ほぼ全てこのアミノ酸系かベタイン系の洗浄成分でできています
実際にこれらのシャンプーを使用してみてしっくりくるのを選ぶのが良いと思います.
シャンプーの成分表でアミノ酸系は,
- ココイルメチルタウリンNa
- ラウロイルメチルアラニンNa
- ココイルグルタミン酸TEA
- ラウロイルサルコシンTEA
ベタイン系では
- ラウリルジメチルベタイン
- コカミドプロピルベタイン
などと表示されています.
アミノ酸系洗浄成分のなかでも,グルタミン酸系やアラニン系などと種類があり,洗浄力と刺激性のバランスが異なります.
より詳細な分類については別記事にまとめていますので,ご覧ください.
アミノ酸系ノンシリコン・シャンプーで使われている洗浄成分の種類と特徴
以上,洗浄成分の説明でした.
最後に重要ポイントをまとめておきます.
②ラウリル硫酸Na,ラウレス硫酸Na,ラウレス硫酸アンモニウム,オレフィン(C14-16)スルホン酸Naは,キューティクルを接着するCMCを溶かす刺激性が強いため避ける
③アミノ酸系かベタイン系の洗浄成分を選ぶ
質感補正成分の役割と,具体的成分・選び方の注意点
質感補正成分の役割
シャンプーの3つの中身の2つ目,質感補正成分について説明します.
質感補正成分はひとことでいうと,「シャンプー時にキューティクルがはがれるのを防ぎ,きしまないようにする成分」です.
質感補正成分として,シリコン成分やポリクオタニム-10がシャンプーに含まれています.
先ほどラウレス硫酸系の説明で,キューティクルがガタガタになるということを説明しました.
ラウレス硫酸系を使用したときとは比べ物にならないぐらい少しですが,髪を濡らすだけでもキューティクルは外へ開きます.
これは水分を吸収して,CMCが広がるからです.
またアミノ酸系やベタイン系の洗浄成分を使用しても,ほんの少しはCMCが溶け出すため,キューティクルが外へ開きます.
このキューティクルが外へ開いている状態で髪をゴシゴシして,髪と髪がこすれると,キューティクルがはがれてしまいます.
また,この状態でシャンプー時に髪をこすると,髪がきしむ感じを受けます.
「髪を乾かさないで寝るといけない」とか聞くと思いますが,これも同じ理由です.
髪がぬれているとキューティクルが開いているため,そのまま寝ると,こすれてキューティクルがはがれ,髪が痛むからです.
とはいえ,シャンプー時に多少キューティクルが開くのはどうしようもありません.
そこで,質感調整成分の出番です.
質感調整成分は,髪の毛を外からコーティングして,こすれてもキューティクルがはがれないようにしたり,シャンプー時にきしまないようにしてくれます.
それでは次に質感補正成分としてどのようなものが使用されるのか,成分を具体的に紹介し,注意点を説明します.
具体的な質感補正成分の名前と選ぶ注意点
質感補正成分としては,シリコンやポリクオタニム-10という名前の成分が使用されます.
シリコン成分としては,
- ジメチコン
- ジメチコノール
- アモジメチコン
などと成分表に記載されています.
ポリクオタニウム-10は
そのままポリクオタニム-10と表示されています.
このふたつを比較すると,シリコン系のほうがコーティング力が強いのですが髪についたまま落ちにくいです.
そのため,その後トリートメントなどをしたときに髪の補修成分がしみこみにくいです.
一方でポリクオタニム-10は,シャンプー時はコーティングしていますが,洗い流すといっしょに流れ落ちてくれます.
最近は良いシャンプーは,シリコンではなくポリクオタニム-10を使う,ノンシリコンシャンプーとなっています.
質感補正成分の注意点
質感補正成分について,2つの注意点があります.
まず,ドラッグストアなどでノンシリコンシャンプーと書かれているものを選ぶときには,洗浄成分に気をつけてください.
ラウレス硫酸系や,スルホン酸系のような洗浄力の強い成分を使用していると,キューティクルがかなりガタガタになります.
その状態でシリコンでなくポリクオタニム-10を使っていると,きちんとコーティングできません.
そのため,シャンプーするたびに髪がきしんだり,キューティクルがはがれたりして髪が痛んでいきます.
気をつけてください.
ノンシリコンシャンプーで選ばないほうがよいシャンプーを以下の記事にまとめています.
洗浄成分の質が悪いノンシリコンシャンプーを避けるべき理由と製品一覧
注意することの2点目です.
洗浄成分がアミノ酸系やベタイン系で,質感補正成分としてポリクオタニム-10が含まれていても,ポリクオタニム-10の量に注意してください.
ポリクオタニム-10が多いと,シャンプーの質感は良くなりますが,洗い流しにくくなります.
シャンプーによるヌメリがなかなか洗い流しにくいです.
ですが,ポリクオタニム-10をきちんと洗い流さないと,頭皮が荒れてしまいます.
またシャンプーの時間が長く,ポリクオタニム-10を長いつけていると,コーティングが固まってきます.
すると髪が固くなり,ゴワゴワしてきます.
ポリクオタニム-10の配合量が多いシャンプーをロングヘアの方が使う際には注意が必要です.
成分表は基本的に含まれているものが多い順に書かれているので,あまりに上位にポリクオタニム-10がある場合は注意が必要です.
ですが実際の使用感は使ってみないと分からないです.
以上,質感補正成分についての説明でした.
最後に重要ポイントをまとめておきます.
②ノンシリコンシャンプーでは,ポリクオタニム-10, -7が使用される
③ポリクオタニム-10, -7が多すぎると,頭皮が荒れたり,髪がゴワゴワするので成分表の上位に書かれてたときは注意する
補修成分の役割
最後にシャンプーの中身の3つ目,補修成分について説明します.
補修成分はその名の通り,美しい髪を保つために髪を補修してくれる成分です.
髪に,くせがある,パサつく,広がる,指どおりがよくない,ツヤがない,など
自分の髪の悩みに合わせた補修成分を選ぶことが重要です.
また髪だけでなく頭皮の状態を整えるコンディショニング成分もあります.
補修成分については,シャンプーもトリートメントも同じような成分が使用されるので,トリートメントの記事で詳細に説明したいと思います.
この記事も長くなりましたので・・・
以上,成分解析からおすすめのシャンプーを選ぶための手法について説明しました.
次のページでは「成分解析からおすすめトリートメントを選ぶ方法」を紹介します。
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