男性型脱毛症(AGA)について、特徴やメカニズム、女性のケースなど、知っておきたい知識をまとめました。
男性の場合に「なぜ、おでこや頭頂から薄くなるのか?」
また、「女性がAGAになるとどうなるのか?」
「薄毛ってどれくらい遺伝するの?」
といった点についても、できるだけ分かりやすくまとめましたので、どうぞご覧ください。
男性型脱毛症AGAの特徴
男性ホルモンが原因となって起こる脱毛症のことを、男性型脱毛症(AGA: Androgenetic Alopecia)と言います。
AGAでは「毛の成長サイクル」が乱れ、まだ成長途中であった毛が脱毛してしまうという特徴があります。
AGAは日本人のおよそ30%に発症します。
男性の場合、おでこの生え際および頭頂部から薄毛化が進行します。
(いわゆるMっぱげ、波平と呼ばれる頭髪になります)
人によっては20代から進行します。
男性型という名前ですが、実はAGAは女性にも発症します。
特に閉経後でホルモンバランスが変化した際に発症しやすいです。
ただし、女性の場合は男性とは薄毛化する部位が異なり、主に頭頂部を中心に頭全体が薄くなります。
そのため頭皮が目立つようになるのですが、男性のように完全にはげてしまうことは少ないです。
女性のAGAはびまん性脱毛症や、FAGAとも呼ばれます。
重要なのは、男性であればおでこの生え際や頭頂部、女性であれば頭全体がなんとなく薄くなった気がすれば、それはAGAの可能性があるということです。
AGAと普通の抜け毛の見分け方
「親や祖父の頭が薄いと、自分も危ないのでは?」と思って、ちょっとした抜け毛も気になってしまいます。
ここでは「普通の抜け毛」と「AGAによる抜け毛」の違いについて説明します。
通常、人は1日に約60本の髪の毛が抜けます。
そのため、この程度の抜け毛は正常な範囲内です。
しかしAGAを発症すると、髪のヘアサイクルが乱れ、成長期の途中で髪の成長が止まって、細くて短い毛が抜けてしまいます。
自分の抜け毛の形態をチェックするには、気になる部分をブラシや手でとかしたときに自然に抜けた毛を調べ、細さと長さを見ます。
もし、1日に200~300本程度髪が抜けていたり、細くて短い毛が多く抜けている場合は、AGAの可能性があります。
では、どのようなメカニズムでAGAが発生するのか説明します。
AGAのメカニズム
AGAによって髪が抜ける理由
AGAは男性ホルモンが影響しています。
男性ホルモンのテストステロンが重要です。ただし、テストステロンが直接脱毛に関わるのではありません。
①テストステロンは毛細血管を流れ、髪の「毛根部分」の毛母細胞へと到達します。
毛母細胞は細胞が分裂して、髪が伸びる元となる細胞です。
②毛母細胞内でテストステロンは、5α-リアクターゼという酵素によって、DHT(ジヒドロテストステロン)に変化します。
③変化したDHTが、毛母細胞内の男性ホルモンレセプター(アンドロゲンレセプター)と結合すると、「細胞が分裂して成長する作用」を止める因子(TGF-β1)が生成されます。
④すると、髪の成長が止まり、抜け毛となります。
以上が、AGAによって髪が抜けるメカニズムです。
なお、女性であっても男性ホルモンのテストステロンは、男性ほどではありませんが、体内で作られています。
また重要なのは、頭皮の脂などは直接的にはAGAによる薄毛の原因ではないということです。
身体の外側ではなく、内側の原因で、抜け毛が発生します。
頭の場所によって抜け毛が異なる理由
以上に説明したように、テストステロンが変化したDHTが男性ホルモンレセプターと結合することで髪が抜けます。
しかし、この男性ホルモンレセプターは、頭部のどの髪細胞にもあるわけではありません。
男性の場合、おでこ(前額部)と頭頂の髪細胞は、この男性ホルモンレセプターをたくさん持っています。
そのため、毛が抜けやすい部位となります。
一方で側頭部の髪細胞は、男性ホルモンレセプターをほとんど持っていません。
このように男性ホルモンレセプターの数が異なるために、薄毛化しやすい場所と、しにくい場所があります。
また、女性の場合は男性ホルモンレセプターが全体的に少ないため、完全にはげることもなく、頭頂部を中心に全体的に薄毛化します。
このように、男性ホルモンレセプターが性別や部位によって異なるために、AGAによる薄毛化が異なります。
次に、AGAと遺伝の関係について説明します。
AGAと遺伝要因
AGAは生活習慣と遺伝要因の両方が組み合わさって引き起こされます。
とくに遺伝要因は強い影響があります。
「親が薄毛だと自分も必ず薄毛になる」、というわけではありません。
しかし、親や祖父・祖母など近親者に薄毛の方が多い人は、自身もAGAになる確率は高いです。
なぜなら、先ほど説明した「男性ホルモンレセプターの数や感度」が遺伝子で決まっているからです。
そのため、近親者に薄毛の人が多い場合は、生活習慣に気をつける必要があります。
参考記事:AGAを予防するための生活習慣とシャンプー方法(工事中)
以上、男性型薄毛症AGAについて、特徴とメカニズム、そして女性の場合の症状について説明しました。
次の記事では「AGAかも?」と思ったら、どのような対策・対応をすれば良いのかについて説明します。
-本記事を書くにあたって参考にした文献一覧-
[1] 専門医が語る毛髪科学最前線, 板見智, 2009.
[2] やってはいけない頭髪ケア, 板羽忠徳, 2014.
[3] 薄毛革命「自毛主義」のすすめ, 音田正光, 2016.
[4] 最後に読む育毛の本, 久田篤他, 2015.
[5] 間違いだらけの薄毛対策, 麻生泰, 2013.
[6] 女子のための髪育レッスン, 浜中聡子, 2015.
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